先日発売された雑誌『Standart Japan』(18号)にエッセイを寄稿した。
タイトルは『僕の周りのジェンダーギャップ』。
今回は、このエッセイに込めた想いや背景について書こうと思う。
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コーヒーカルチャー誌『Standart Japan』にはこれまでに二度エッセイを載せてもらっていて(9号&10号)、いつかまた書きたいと思っていた。なので、今年の春にStandart Japan制作統括の行武温さんから「そろそろまた何か書きませんか?」と連絡をもらったときは悩まず「書きます!」と即答した。そして僕はすぐに執筆テーマを考えはじめたのだけれど、テーマを思いつくのに時間はかからなかった。というか、ずっと頭にあったものをこの機会に書かせてもらおうと思った。そのテーマが、『日本のコーヒー業界におけるジェンダーギャップ』だった。
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僕はジェンダーの問題やフェミニズムについて勉強したり、発信したりしているけれど、自分が身を置いている日本のコーヒー業界に関してこのテーマで重点的に考えたりまとめたりしたことはこれまでなかった。加えて、昨今は様々な業界でハラスメントが事件化したり、当事者が声をあげるケースが増えてきているけれど、コーヒー業界を見回しても(あくまで僕に見えている範囲では)日本でそういった指摘がなされているのをほとんど見たことがない(※)。「もしかしたらコーヒー業界はジェンダー平等な業界なのか?」という発想も一瞬頭に浮かんだけれど、業界団体のWEBサイトにある役員名簿を見て、その考えはすぐにどこかへ行ってしまった。業界団体の役員は、ほぼ全員が男性だった。日本のコーヒー業界はあきらかに男性優位だ。自分が関心を持つ課題で、自分が関係する業界に問題点がある以上、放っておくわけにはいかない。これをテーマに書きたいと、僕の心は決まった。
(※これは僕の推測だけれど、コーヒー業界がこれまでジェンダーギャップにあまり向き合ってこなかった要因のひとつは、コーヒーの世界では生産国の農家の賃金の低さや労働環境などのグローバルな問題が大きく取り上げられてきた影響があるのかもしれない。ただ、そのことは日本で働く女性やマイノリティーの問題を見過ごしていい理由にはならない)
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ただ、このテーマでの執筆をStandartが受け入れてくれるかについては不安もあった。だって、Standartはコーヒー業界で広く読まれている雑誌で、購読者も広告主の企業なども業界内に多い。そんな雑誌に業界批判的な側面のある記事を載せられるものなのかどうか。。
僕としては、もしNGが出たら勝手に書いてどこかで発表しようというくらいの心づもりだった。でも心配は無用だった。Standartからの返事はOKで、むしろ業界内の企業と取引のある僕たちの商売への影響を心配してくれた。(僕たちとしては、それで取引を渋るような企業などこっちから願い下げだ)
さらに、記事に関わる人のジェンダーバランスも考慮したいとの僕の要望も受け入れてくれて、カフェ関連のメディア運営や編集・執筆を行う大井彩子さん(「CafeSnap」代表)をご紹介いただき、ゲストエディターとして加わってもらった。大井さんも業界とのつながりが深くリスクがあるはずなのに、参画を快諾してくださったことに大変感謝している。
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こうして企画を進めて行く中で、業界で働いた経験のある女性たちへインタビューを行い、その生の声を載せることや、業界団体にジェンダー平等に関するメール取材を実施して紹介することなどが決まっていった。
ちなみにみなさんにはどうでもいいことだと思うのだけれど、僕は普段、いわゆるオピニオン記事を中心に書いているので、インタビューや取材を中心に据えるようなジャーナリスティックな記事はあまり経験がなく、今回の企画はそれなりにチャレンジだった。行武さんと大井さんの多大なるお力添えがあったからこそ書き上げることができたので、本当に感謝です。
記事の中身については読んでいただくとしてここでは触れないけれど、インタビューを受けてくださった3名の女性の声は、コーヒー業界のジェンダー不平等を生々しく浮き彫りにしているので、ぜひ多くの方にその言葉に触れてほしいと思う。リアルな声を聞かせてくださった3名には心から感謝している。
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最後に、僕は今回寄稿した文章について、書く前も、書いている最中も、書き終わった今も、「これでちゃんと伝えられているだろうか」「この文章が誰かを傷つけてはいないだろうか」とずっと不安を抱えている。それに、そもそも「この文章を書くのが男性である僕で良いのだろうか」という葛藤も払拭しきれていない。
それでも、というかむしろそういった不安と葛藤を抱えた文章だからこそ、多くの人に読んでほしいと思っている。反論も反発も、疑問も違和感も、すべて受け止める覚悟です。どうか読んでください。
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中村佳太[Twitter:@keitanakamu]
Standartは毎号すごく面白いので、定期購読をおすすめします◎
購入について
『Standart Japan』(18号)は、Standart JapanのWebサイトから購入できるほか、全国の書店やカフェなどでも販売されています。また、大山崎 COFFEE ROASTERSでも店頭およびオンラインで販売しています。
●大山崎 COFFEE ROASTERSからオンラインで購入する場合
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●大山崎 COFFEE ROASTERS店頭での購入を予定されている方については、取り置きも可能です。取り置きをご希望の場合には、問合せフォームもしくは大山崎 COFFEE ROASTERSの各種SNSのDMからご連絡ください。
座談会ポッドキャストについて
今回紹介したエッセイ『僕の周りのジェンダーギャップ』に関して、Standart Japan制作統括の行武温さんとゲストエディターである大井彩子さんと僕の3名で座談会を実施します。その様子を近くこのニュースレターでポッドキャスト配信する予定ですので、ぜひ聴いてください。
発売記念オンラインイベントについて
『Standart Japan』18号の発売を記念して、代官山 蔦屋書店主催のオンライン配信イベントが11月23日(火)に開催されるそうです。編集長の室本寿和さんと行武温さんがメイキングや裏話を語ってくれるそうです。僕はもちろん申し込みました。みなさんもぜひ。
●イベント詳細・申込みはこちら。
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