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”ジェンダー観の違いで恋人と喧嘩になります”

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”ジェンダー観の違いで恋人と喧嘩になります”

ナカムラケイタのお悩み相談室 vol.08

中村佳太|Keita Nakamura
Jun 15, 2022
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”ジェンダー観の違いで恋人と喧嘩になります”

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こんにちは。中村佳太です。

今回は『ナカムラケイタのお悩み相談室』の第8回です。

お悩みは随時募集中です。これを読んだ方で「自分も相談してみよう」と思った方は「お便りフォーム」からお寄せください。お待ちしています。

それでは、今回のお悩みをご紹介します。

私は恋人がいるのですが、ジェンダー観の違いで度々喧嘩になります。

女性専用車両やレディースデーは男性差別である、性犯罪は無くならないので女性はそれを理解して自衛するべき、性犯罪を無くしたいなら被害者がもっと具体策を提案するべき、などが彼の意見で、フェミニストである私にとってかなり受け入れ難い内容です。

彼がジェンダーやフェミニズムについて知識がないために言っているんだなと感じる意見ばかりなため、一緒に学ぼうと提案しましたが、知識がないという指摘がプライドを傷つけたようで、なんで自分が勉強しないといけないのか?という反応でした。

ここまでの説明でなぜ付き合っているのか?と思われそうですが、この話題をしている時以外は一切不満がなく、大好きな恋人です。

ただ大好きな分、彼の考えを聞くたびに典型的なジェンダーに無知な特権階級の意見だなと感じ、絶望します。(最近「僕の狂ったフェミ彼女」を読み、まんま自分すぎて号泣しました、、)

ナカムラさんはパートナーの方をきっかけにジェンダーへの気づきがあったとのことですが、どのようにパートナーの考えを受け入れましたか?
(アスカ)

<注意:回答の中で小説『僕の狂ったフェミ彼女』の内容に言及しています。ご留意ください>


うぅ、つらいですね。相談文を読んでいて、僕もとてもつらい気持ちになりました。

アスカさんは女性としておそらくご自身でも女性差別を経験していて(『僕の狂ったフェミ彼女』をご自身に重ねてらっしゃったのでアスカさんが女性であると判断しました。違っていたらお詫びします)、その上で社会に蔓延するジェンダーギャップや女性差別に対してフェミニストとして何とかしたいと考えているのに、恋人には全く理解してもらえない。「一緒に学ぼう」と提案しても拒否されてしまう。本当につらいと思います。

以前僕もある友人(男性)がジェンダーステレオタイプな発言を女性に対してしていたので、「フェミニズムを学んだ方がいい。そうすれば、そういった発言の何が問題なのか理解できるから」と提案しましたが、全く聞く耳を持ってもらえないばかりか、腹を立てられてしまいました。なんというか、入口にすら立ってくれない悲しさや、大きな壁のようなものを感じ、絶望したのを思い出しました。

大好きな恋人に理解してもらえないアスカさんの悲しみは、その何百倍・何千倍だろうと思うと、心が締め付けられるようです。

◇

僕が「どのようにパートナーの考えを受け入れたか」、「どのようにジェンダーの問題に気づいたか」とのご質問については、アスカさんの状況にはあまり参考にならなそうです。

というのも、僕の場合にはパートナーが勇気を出して僕に伝えてくれた様々な違和感(主に一緒にお店を運営する上での営業さんやお客さんやメディアからの言動に対しての違和感)を聞いたときに、とくに大きな反発なく「それはおかしいぞ」と感じ、自分でフェミニズムの本などを読んで勉強を始めました。全く理解できていないところからスタートしたのですが、勉強をしながらパートナーにもたくさん質問をして、徐々にパートナーが抱いてきた苦しみや違和感を共有できるようになっていったんです(まだまだ不十分ですが)。

なので、話を聞いてくれない、勉強もしようとしないアスカさんのパートナーさんとはかなり感覚?性格?が違うようで、僕のケースは参考にならないと思うんです。

◇

そこで僕も『僕の狂ったフェミ彼女』を読んでみました(すごく気になってたんです!)。そしたら、余計に頭を抱えてしまいました。。

主人公の男性(スンジュン)はフェミニストになった彼女を「変な考えに洗脳されてしまった」と思っていて、彼女の「目を覚まさせよう」と必死になります。「洗脳されている」と思っているから彼女の言葉に聞く耳を持たない(洗脳されているのはほんとは主人公の方だと僕は思います。彼は家父長制やジェンダーロールに洗脳されてますよね)。最後は多少の変化の兆しが見えますが、彼がいつか彼女のことを理解できるようになれるかというと、かなり怪しいと僕には感じられました。

◇

そうしてあれこれと考えたのですが、僕は正直、アスカさんはもうパートナーさんと別れた方が良いと思います。

フェミニストを自覚しているアスカさんにとって、今の恋人と過ごしているとすごく心が消耗すると思うのです。「ジェンダーを話題にしている時以外は一切不満がない」とのことですが、ジェンダーにまつわる価値観はあらゆる場面に影響してきます。身近なところでは友人や家族との関係、家事の分担や仕事への向き合い方、様々な契約などにもジェンダーは影響しますし、政治や経済、芸術や宗教の話をするときにもジェンダーの問題を抜きにしては考えられません。この社会でジェンダーに関係しない事柄の方が少ないと言っていいです。これからおふたりが長い時間を一緒に過ごすことを想像したとき、そういった一つ一つの場面でアスカさんの心が削られてしまうのではないかと思うのです。

何よりも守るべきなのは、アスカさんの心です。アスカさんの心が崩れてしまう前に、一度いまの恋人とは距離を取ることが最善ではないかと、僕は思います。

◇

アスカさんのパートナーさんに対して(あと、スンジュンに対しても)僕が伝えたいのは、「自分にとって本当に大切な人の言葉なら、一度その言葉を本気で受け止めようよ」ということです。

まずは相手の言葉を受け止めて、一緒に勉強して、一緒に考えて、その上でそれでも「フェミニズムが間違っている」と思うのであれば、それは仕方ないかもしれません。でも、相手の言葉を本気で受け止めようとしない人、最初から聞く耳を持たない人が、本当に相手のことを大切に思っているか、僕にはすごく疑問です。そしてそういった人と分かり合うのは、おそらく難しい。とても悲しいけれど。

◇

もし可能なら、パートナーさんにこう伝えてみるのはどうでしょうか。

「私のことが本当に大切なら、まずは私の言葉を真剣に受け止めてほしい。そして一緒にフェミニズムを勉強してほしい。それができないなら別れる」

とても勇気と体力がいると思いますので、繰り返しになりますが、まずはアスカさんの心を守ることを最優先にしてください。その上で、もしできそうであれば、この言葉を彼にぶつけてみるのは、ひとつの案ではないかと思います。

アスカさんにとって良い方向に向かうことを願っています。


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