お店とホモソーシャル
先日、久しぶりにパートナーとお出かけをしました。お目当てはとあるインテリアショップ。ずっと前からそのお店でしか売っていないインテリアがほしくて、ネットでも買えるのだけど、安い買い物ではないので直接見てから買いたいと思っているうちに何年も経っていました。いまは時間もあるし、そのときは感染状況も落ち着いていたので、ついに「えいや!」っと重い腰を上げて買い物に出かけました。
到着したお店は外観からしてとてもこだわっていて、中に入るとそのこだわりはより強烈でした。作り込まれた世界感で、とても“カッコイイ”。ただ、入店直後からなんとなく違和感があって、店内を少しぶらついてみるとその違和感の原因はすぐに分かりました。10名くらいいる店内スタッフの全員が男性だったのです。ちなみにこのお店の商品はいわゆる“男性向け”(この概念自体にも注意が必要ですが)というわけではなく、実際にお客さんには女性も多かったです。
とりあえず店内を一通り見て回って、お目当ての品だけ購入したあとは、そそくさと二人でお店を出ました。すると、外に出るなりパートナーがすぐに言いました。
丁寧に作られたお店だったけど、居心地は悪かったね。あれはたぶん、スタッフに男性しかいないのが原因だろうね
おぉ、同じことを感じてた。
僕が感じた「違和感」も、パートナーが感じた「居心地の悪さ」も、どちらも原因は「スタッフが男性のみ」であることに由来していたようです。というのも、僕もパートナーもいわゆる「ホモソーシャル」な空気が嫌いで、それが今回の感想につながったのだと思います。
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ご存じの方は読み飛ばしていただいてかまいませんが、「ホモソーシャル」とは、同性同士の非性的な絆や関係性を表す言葉で、主に男性間の仲間意識に対して使われることが多いです。(男性の)ホモソーシャルの特徴としては、「ミソジニー(女性蔑視)」と「ホモフォビア(同性愛嫌悪)」が顕著だといいます。
僕は中学・高校と男子校に通っていて、この空気は実感としてよく分かります。若手の女性教師をからかい、同調しないやつは仲間ではないと認定される。仲が良くていつも一緒にいるような男性二人組を蔑み、おちょくる。
正直僕もその空気に加担したことが全くないとは言えません(反省しています)。ただ、少なくともそのような空気はずっと好きではなかったし、そういった環境を離れたいまの方が圧倒的に生きやすいと感じています。最近になって「ホモソーシャル」という概念が広がり、ホモソーシャルな社会が批判されるようになったことを僕は嬉しく思っています。
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話をインテリアショップに戻すと、そのお店では男性のみが働いていて、彼らにホモソーシャルな匂いを感じ取ったことが、僕らを早く店の外へと向かわせたのだと思います。なお、彼らが具体的にミソジニー的あるいはホモフォビア的な言動をしていたとか、そういったことは一切ありません。むしろとても感じがよく、丁寧な接客でした。僕たちが感じ取ったのは、あくまでもその空気感です。
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こないだノルウェーで働いている知人と話をしたときに教えてくれたのですが、ノルウェーでは男性だけのお店や組織はほぼ存在しないのだそうです。その理由は、ジェンダー平等が進むノルウェーでは、もしお店のスタッフが男性だけだったりするとお客さんからの印象が悪く、指摘されることもあるそうです。それに何より、ジェンダーバランスの取れた組織の方が内部の雰囲気が良いことを多くの人が実感しているので、自分たちが気持ちよく働くために率先してジェンダー平等な組織を作っているといいます。
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ホモソーシャルな繋がりが強いと、お客さんや取引先など外から見ると「内輪感が強く」「嫌な感じ」でも、そのことを本人たちは気づきにくい。だからこそ、お店をはじめるときにも、人を採用するときにも、ジェンダーバランスを意識することが大切だと思います。
そのお店のインテリアは、デザインも良く丁寧に作られていて素晴らしいものでした。でも、たぶん僕たちがそのお店に行くことはもうありません。
人は商品の品質だけで行く店を選ぶわけではない。その店の雰囲気が大切なことは言うまでもありませんが、その「雰囲気」とは、内装や店員の接客だけで作られているわけではなく、その組織の体制や価値観がにじみ出るものです。
労働環境の改善について議論されるようになって久しいですが、ホモソーシャルな組織が内部だけでなく外部に与える影響についても、もっと意識されるようになってほしいと願ってやみません。
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中村佳太[Twitter:@keitanakamu]
最近生まれてはじめてマニキュアをしたら、めちゃ気分が上がりました◎
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