こんにちは。中村佳太です。
前回の配信でお知らせした『IWAKAN』6号に僕がゲスト編集者として参加した記事『コーヒーは男のもの?ー「コーヒーと男性」を巡る鼎談』は読んでいただけたでしょうか?
まだの方はもったいない!!(↓に少しだけお見せします)
素晴らしい記事が満載の『IWAKAN』6号なので、ぜひ買って読んでくださいね。
(大山崎 COFFEE ROASTERSのオンラインショップや店頭でも販売してます)
さて、今回の配信は特別編です。
IWAKAN6号では、しば田ゆきさん(オトナリ珈琲)とまこさん(MÖWE COFFEE ROASTERS)と僕の3名でおこなった鼎談の内容を記事にしていますが、実は当日議論をしたけれど紙幅の関係で泣く泣くあきらめた未掲載の原稿が存在します。
未掲載の理由は決してその議論が不十分だったからではなくて、紙幅と記事全体の内容などを考慮した結果でした。でも、おふたりからすごく貴重な話を聞かせていただいたのにこのままお蔵入りにしてしまうのはもったいない!!とずっと思っていて、何とか公開できないかと考えていました。
そして今回、IWAKAN編集部、および、しば田さんとまこさんの承諾を得て、このニュースレターで配信できることになりました。感謝!!
未掲載となったテーマは大きく『競技会と「男性性」』と『コーヒー業界と性的マイノリティ』の2つです。この2つを2回に分けて配信します。
まず今回は『競技会と「男性性」』について。どうぞお楽しみください。
※発言者の記載のない文章は中村佳太による解説・見解です。
競技会と「男性性」
中村:何度か話に出ている「競技会」についておふたりにお聞きしたいことがあります。僕は競技というものに関心がなく一度も参加したことはないのですが、コーヒー業界では近年バリスタや焙煎士などの競技会が増えていますよね。しかも、それぞれの競技会が毎年行われるから「〇〇大会で優勝したコーヒーのチャンピオン」という人がどんどん増えていく。そういった人が広告に使われたりするから資本主義的には業界の活性化や市場の拡大に貢献していると思いますし、もちろん競技を通じて業界全体のスキルアップが行われている面もあります。ただ、一般的に「競争」「勝利」「名声」といったワードは「男性性」と親和性が高い。競技会に多様なセクシュアリティの人が参加してほしい/参加しやすくなってほしいと思う反面、そもそも男性の方が社会的に「男性性」を獲得している現状では、競技会の権威が業界内で高くなりすぎることは男性優位構造を強化してしまう面があるのではと危惧しているんです。
まこ:たしかに競技会の権威は高まっていると感じています。競技会で実績を出さなければどれだけ美味しいものを作ってもお客さんが認めてくれないような雰囲気がある。自分で飲んで味で選ぶより、「チャンピオンのコーヒーだから美味しい」みたいに思ってしまっている人が多くて、権威主義的だなと思います。
しば田:競技会に関わった経験から言って、競技会の審査や審査員の選別自体は公正に行われていて実力主義だと思います。「女のくせに」とか「女性だから」というのは感じたことがありません。それと、競技会はたしかに業界の活性化に役立っていると思います。ただ、最近の競技会は「とにかく名声を得たい」という参加者が増えたように感じて面白くないです。以前はただ夢中で取り組んでいる人が多かったのに。名声を得たい人ってたぶん男性に多いですよね。それが社会的に男性に求められているからだと思います。もしかしたら競技会は無くすのが一番良いのかもしれないですね。
まこ:競技会で結果を残そうと思うと練習のための時間やお金が必要になるのですが、その点、家事や育児の負担が少ない男性の方が有利ですよね。そもそもそういったことを気にして競技会に参加しない/できない女性は多いんじゃないかと思います。
ジェンダーステレオタイプや家事・育児を含めた社会状況を考えると、男性は競技会で結果を残すのに有利な状況がある。競技自体をどんなに平等に実施したとしても、その土壌であるコーヒー業界自体に不平等があってはそこで行われる競技会が公正とは言えないだろう。不平等な土壌を改善しないまま競技会を続けていたら男性のチャンピオンが増え、男性がより権威を持ち、その結果業界の男性優位が強化されてしまう。これを打開するためには、競技会の権威性を抑制したり(たとえば「チャンピオン」の称号に期限を設けてメリットを小さくするのはどうだろう?)、クオータ制の導入を含めた多様なセクシュアリティを持った人が経済的・心理的に参加しやすくなる支援を業界として取り組むことが必要だろう。
次回は明日(2023/6/6)の配信予定です。
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